プリズナーズ

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公開日 2014/05/03  153分


★★★★★★★ 7.0


2時間半を越えるサイズはサスペンス映画としては稀だろう。
しかし、重厚という表現がぴったりなこの作品は、至るところに心理的な陰を散りばめながら展開を二転三転させる。
子供をなくした親の暴走は、被害者である主人公だけではない。
結果的に主人公は、あがき、暴れまくった故に、願った結果を得ることが出来た。
子供の命が何にも勝る親にとっては、それがまずすべてであり、願いは叶ったといえるのかもしれない。
だがいや、この結末は、取り返しのつかない地獄に踏み込んでしまった主人公故に、犯人が目論んだ顛末のようにも思える。
養子が行方不明になっても騒がないことが不可思議だったのだが、それこそが目的だったのだ。
サスペンス・タッチは『羊たちの沈黙』に近いかと思う。
当初は『セブン』と比較される批評に違和感があったのだが、メリッサ・レオ演じるやり場のない絶望感に満ちた悪魔のような計画性はなるほど『セブン』に例えられる所以だろう。
ロジャー・ディーキンスのカメラは印象的で、ジェイク・ギレンホールを張り込み中の雨が次第に雪に変わっていく映像などは驚異だ。
『ウィンターズ・ボーン』でも描かれたアメリカの地方の貧しさ、闇の深さ、蝕まれよう。冒頭から描かれるリバタリアニズム(銃規制反対に象徴される完全自由主義)が普通だった明るく陽気なアメリカはもうないのだ。
そんな教えを受けた父親との関係を消化できていない主人公。
少年院出でタトゥーだらけであるにも関わらず腕利きと呼ばれる刑事。
告解に来た連続殺人犯をなぶり殺した神父。
真犯人もアメリカの良き時代を生き、自由な未来を思い描いていたのだろう。
陰を抱えた登場人物達はアメリカの一地方の陰の部分だが、この地方の闇がアメリカ全体を覆おうとし、今や象徴しているのだろう。
『灼熱の魂』でセンセーショナルな世界デビューを果たした監督だが、それがフロックではないことを認識させられるリアルで緻密な恐怖に満ちた一級サスペンスだ。

原題  PRISONERS

製作国 アメリカ
製作 Alcon Entertainment
配給 ポニーキャニオン
配給 松竹

監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ Denis Villeneuve
製作 ブロデリック・ジョンソン Broderick Johnson
製作 キーラ・デイヴィス Kira Davis
製作 アンドリュー・A・コソーヴ Andrew A. Kosove
製作 アダム・コルブレナー Adam Kolbrenner
製作総指揮 エドワード・L・マクドネル Edward McDonnell
製作総指揮 ジョン・H・スターク John H. Starke
製作総指揮 ロビン・マイジンガー Robyn Meisinger
製作総指揮 マーク・ウォールバーグ Mark Wahlberg
製作総指揮 スティーヴン・レヴィンソン Stephen Levinson
脚本 アーロン・グジコウスキ Aaron Guzikowski
撮影 ロジャー・ディーキンス Roger Deakins
プロダクションデザイン パトリス・ヴァーメット Patrice Vermette
衣装デザイン レネー・エイプリル Renee April
編集 ジョエル・コックス Joel Cox
編集 ゲイリー・ローチ Gary Roach
音楽 ヨハン・ヨハンソン Jhann Jhannsson

出演 ヒュー・ジャックマン Hugh Jackman
出演 ジェイク・ギレンホール Jake Gyllenhaal
出演 ヴィオラ・デイヴィス Viola Davis
出演 マリア・ベロ Maria Bello
出演 テレンス・ハワード Terrence Howard
出演 メリッサ・レオ Melissa Leo
出演 ポール・ダノ Paul Dano