ある過去の行方

店舗イメージ

公開日 2014/04/19  130分


★★★★★★ 6.0


登場人物たちは常に話し合おうとする、解り合おうとする。
だが解り合えない、伝わらない。苛立つ声が画面に大きく響く。
こんな女は嫌だな…と思う。
自殺未遂の原因を巡って二転三転する物語。
紐解かれていく謎。
そこに至るまでには登場人物が追う謎と、観客が追う謎があって、登場人物のみが知る謎と観客のみが知る謎がある。
例えば元夫がイランに帰国した経緯や、おそらくそれも理由の一つであろう離婚の原因はつぶさには語られない。
新たに夫となる男が嫉妬する所以も明確ではない。
その一方で、おそらくクリーニングで染みを付けたのは、その男の子であろうことなどは観客の視線でしか解らない。
サスペンス度は『別離』よりも高い。
社会的な背景については日本人には解り辛い。
とはいえ、移民が描かれてはいるが、その特殊性は薄い。
『別離』と同様に世界中のどこにでもある話だ。
オープニングから手首に包帯を巻かれた女性に目が行く。
その傷は事故なのか自傷なのか、その意味につい想いを馳せてしまうが、それよりも、オープニングから観客の注意を惹こうとするテクニックにも思えてしまう。
卓越したストーリーテラーであるのは間違いないが、テクニックが見えてしまうと、そこで感情移入が遮られてしまう。
その辺りが難に思えるし、主人公への共感性も薄いが興味深く惹き付けられる作品だった。
特にこの監督が拘っていると思えるラストは相変わらず素晴らしい。
あり得ないと思っていたが、植物状態からの復帰はあるのか?
いや、そういう表現ではなく、涙の意味を考えさせたいのか?
謎を深める意図がまた作為的にも思えるのだが。

原題  THE PAST

製作国 フランス
製作国 イタリア
製作国 イラン
製作 Memento Films Production
製作 France 3 Cinéma
製作 BIM Distribuzione
配給 ドマ DOMA Inc.
配給 スターサンズ STARSANDS CO.,Ltd.

監督 アスガー・ファルハディ Asghar Farhadi
製作 アレクサンドル・マレ=ギィ Alexandre Mallet-Guy
脚色 マスメ・ラヒジ Massoumeh Lahidji
脚本 アスガー・ファルハディ Asghar Farhadi
撮影 マームード・カラリ Mahmoud Kalari
編集 ジュリエット・ウェルフラン Juliette Welfling
音楽 エフゲニー・ガルペリン Evgueni Galperine
音楽 ユーリ・ガルペリン Youli Galperine

出演 ベレニス・ベジョ Berenice Bejo
出演 タハール・ラヒム Tahar Rahim
出演 アリ・モサファ Ali Mosaffa
出演 ポリーヌ・ビュルレ Pauline Burlet
出演 サブリナ・ウアザニ Sabrina Ouazani
出演 ババク・カリミ Babak Karimi
出演 ヴァレリア・カヴァッリ Valeria Cavalli