
公開日 2014/03/14 106分
もう今更ながらだが、これもレッドフォードのハンサムな映画。
一人芝居だ。
台詞はほとんどなし。主人公の素性も殆んど分からない。
本作は「すべてを失った」というタイトル通りの台詞で幕を開ける。
インド洋上でのヨットの単独航海中に漂流中のコンテナにぶつかったことが物語の発端だ。
しかも衝突した箇所が運悪く、通信手段まで失ってしまう。
主人公は強靭な意志と優れた判断力をもとに淡々と対策を試みてゆくが、その後の悪天候などによって状況はどんどん悪化していく。
もはや老齢ゆえに激しいアクションはない。
身体を休めるシーンも多い。
そこの意味を汲み取らずに焦れてしまったなら、この作品の素晴らしさは解らない。
動きの遅い老人を見守るような視線が必要だ。
そしてそこまで淡々とサバイバルを尽くしてきた主人公が、絶望や疲労や空腹の果てにヘマをおかしてしまう。
しかしながら、そのヘマが結局は思わぬ方向に向かったのかもしれない。
終盤の展開には一瞬、レッドフォードの遺作的な意味合いさえあるのかとさえ思ったが、その先のラストにはジンときた。
そのシーンにはおそらくいろんな解釈ができるであろう。
確かに飛翔、旅立つイメージともとれる。
現実かどうかさえ分からないのだが、私は現実のシーンと受け取りたい。
とにかく、胸は熱くなる。
設定その他で『ゼロ・グラビティ』と対比されるのは解るし、対比すること自体は面白いかもしれないが、実はその比較は難しいし、あまり意味がないと思う。
この洋上での台詞のない一人芝居は、近年のアトラクション・ムービーとは対極に位置する。
今の時代にヒットしないのは解る。
だが、本作がメジャーのロードショーに乗ることを嬉しく思う。
今年のオスカー・ノミネーション最大のサプライズはレッドフォードが外れたことと言われるが、本人はハナからそんなことは意に介していないことは作品に滲んでいる。
レッドフォードのハンサムさは勿論ファッションではなく、言うべきことや言いたいことを巧みに表現する才能と意志なのだ。
原題 ALL IS LOST
製作国 アメリカ
製作 Before The Door Pictures
製作 Washington Square Films
製作 Black Bear Pictures
製作 Treehouse Pictures
製作 Sudden Storm Productions
配給 ポニーキャニオン PONY CANYON INC.
監督 J・C・チャンダー J.C.Chandor
製作 ニール・ドッドソン Neal Dodson
製作 アナ・ゲルブ Anna Gerb
製作 ジャスティン・ナッピ Justin Nappi
製作 テディ・シュウォーツマン Teddy Schwarzman
製作総指揮 コーリー・ムーサ Corey Moosa
製作総指揮 ザカリー・クイント Zachary Quinto
製作総指揮 ロバート・オグデン・バーナム Robert Ogden Barnum
製作総指揮 ケヴィン・チューレン Kevin Turen
製作総指揮 ハワード・コーエン Howard Cohen
脚本 J・C・チャンダー J.C. Chandor
撮影 フランク・G・デマルコ Frank G. DeMarco
水中撮影 ピーター・ズッカリーニ Peter Zuccarini
プロダクションデザイン ジョン・P・ゴールドスミス John P. Goldsmith
編集 ピート・ボドロー Pete Beaudreau
音楽 アレクサンダー・イーバート Alexander Ebert
特殊効果.SFX.VFX ロバート・マンロー Robert Munroe
出演 ロバート・レッドフォード Robert Redford