
公開日 2014/03/07 134分
黒人奴隷制を描いた映画は数多く作られてきたが、初めてのアカデミー作品賞受賞作となった。
ちなみに、本年のアカデミー賞のライバル作『ゼロ・グラビティ』が受賞していれば、SF映画で初の受賞作となったのだとか。
監督は前作『シェイム』で一躍脚光を浴びたスティーブ・マックィーン。
本名なのだろうが、米映画界でこの名はハンディキャップなのか、アドバンテージなのか。
さてその内容については良くできているとは思うが、これまでの黒人差別を題材にした映画と比べて、特別に抜きん出ているとは思えなかった。
その残虐さの表現も、特に奴隷の主人に対する言動など、かなり柔げられているように感じる。
今の時代、残虐な描写ができないこともあるだろう。
ただ映像技術の向上から、ムチ打ちなどの映像がよりリアルに描けているだけに生々しく痛々しい。
もはや新たな切り口は存在しないとも思うジャンルではあるが、ただ本作の主人公である「自由黒人」という立場への視線、奴隷でもなく白人社会にも属さないという者を、他の立場の者はどう見ているのかを新鮮に重く見ることができた。
この私自身の視線はどうなのかをも、また考えさせられる。
なぜ今、本作がオスカー受賞なのかの一つの答えは黒人監督による作品という話題性だろう。
それに黒人奴隷制を題材にした映画の減少の故の新鮮さや、こういった作品を作り続けなければ、また評価し続けなければならないという製作者と観客の意思、思惑の一致もあるだろう。
また逆に、過去の汚点を取り上げることに対する社会的な嫌悪感の減少もあるかもしれない。
それに自由というものに注視するなら、いつの時代でも普遍的なテーマとして観ることができるだろう。
毎年、様々なメディアでオスカー・レースが取り上げられるが、本作は日本では東宝系の独占上映。上映館が少ない。
現状の東宝の国内での圧倒的なシェアや、洋画の減少を思うと複雑な気持ちだ。
もの凄く感情を揺さぶられる作品ではないが、今の時代に合った程度の刺激の作品なんだと思う。
この少し前に観た『カティンの森』の評価が芳しくなかったのと合わせて考えると、映画はその内容や出来とは別に、観られる時代とともにあることを思う。
キャストはアンサンブル的に好演者揃い。
オスカー助演賞のルピタ・ニョンゴが取分け良かったとは思わない。
疑問が残るシーンがある。判事の奴隷時代に、誕生会に遣わされる際に「気を付けろ」的なことを言われるが、結局何もない。あれは何だったんだろう。
原題 12 YEARS A SLAVE
製作国 アメリカ
製作 Regency Enterprises
製作 River Road Entertainment
製作 プランBエンタテインメント Plan B Entertainment
製作 New Regency Pictures
製作 Film4
配給 ギャガ GAGA Corporation
監督 スティーヴ・マックィーン Steve McQueen
製作 ブラッド・ピット Brad Pitt
製作 デデ・ガードナー Dede Gardner
製作 ジェレミー・クライナー Jeremy Kleiner
製作 ビル・ポーラッド Bill Pohlad
製作 スティーヴ・マックィーン Steve McQueen
製作 アーノン・ミルチャン Arnon Milchan
製作 アンソニー・カタガス Anthony Katagas
製作総指揮 テッサ・ロス Tessa Ross
製作総指揮 ジョン・リドリー John Ridley
脚本 ジョン・リドリー John Ridley
撮影 ショーン・ボビット Sean Bobbitt
プロダクションデザイン アダム・ストックハウゼン Adam Stockhausen
衣装デザイン パトリシア・ノリス Patricia Norris
編集 ジョー・ウォーカー Joe Walker
音楽 ハンス・ジマー Hans Zimmer
出演 キウェテル・イジョフォー Chiwetel Ejiofor
出演 マイケル・ファスベンダー Michael Fassbender
出演 ベネディクト・カンバーバッチ Benedict Cumberbatch
出演 ポール・ダノ Paul Dano
出演 ポール・ジアマッティ Paul Giamatti
出演 ルピタ・ニョンゴ Lupita Nyong'o
出演 サラ・ポールソン Sarah Paulson
出演 ブラッド・ピット Brad Pitt
出演 アルフレ・ウッダードAlfre Woodard