舟を編む

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公開日 2013/04/13  133分


★★★★★ 5.0


辞書編集室を舞台に描かれる。
馴染みのない世界が新鮮だ。
一冊作るのに10年以上掛かるとか、たった数人掛かりで、しかも殆んど手作業だとか。
頭デッカチでは活きた言葉は得られないとか。

プロポーズに対する宮崎あおいの返事が唐突過ぎる。
その台詞までの怒り具合で流れを作ってはいるんだろうけど、そもそもそこまでの感情に至る経過がまったく見えない。
この画面上で流れる時間の裏の時間を感じさせない作りが残念だ。
加藤剛が編集室を去った後の時間もそうで、後から台詞でのみ補足されているのが、脚本の作り込みを感じさせない。
おそらく、三浦しをんの原作自体が浅いのだろうと思う。
本作共々読んではいないのだが『風が強く吹いている』の時も同じことを思った。
『風が強く吹いている』は箱根駅伝の舞台裏を描いて、その視点の良さが作品を支えるすべてのように思う。

ただ、物語の掘り下げが浅いことが悪い訳ではない。
気軽に読める、観られるというのも作品の魅力の一つなのだ。
その一方で、オダギリジョーの性格描写は素晴らしい。
初めてオダジョーを上手いと思った。

『右を説明してみろ。』なるほど、言葉は難しいと思った。
ITが発達した今では、本作のような辞書の作り方はしないのだろう。
それだけにこの時代ならではの良さを見せられる。
辞書作りに限ったことではない。
PCなどの機器もなく、気の遠くなるほど膨大な、海のように広がる言葉へ挑む姿勢。
それは仕事に対する姿勢である。
何年もの時間を掛けて挑み続けるには言葉というものに単なる興味だけではない気持ちがあるのだろうし、その姿だけで感動的である。
しかもその成果物といえば、出来た瞬間から陳腐化してゆくという時間の残酷さを見せつける。
まさに言葉は生きている、人とともに生きているんだと思わせられた。

原題  舟を編む

製作国 アメリカ
製作 「舟を編む」製作委員会
製作 テレビ東京 
製作 松竹
製作 アスミック・エース
製作 電通
製作 光文社
配給 松竹
配給 アスミック・エースエンタテインメント

監督 石井裕也 Ishii Yuya
製作 土井智生 Tsuchii Tomoo
製作 五箇公貴 Goka Kimitaka
製作 池田史嗣 Ikeda Fumitsugu
製作 岩浪泰幸 Iwanami Yasuyuki
原作 三浦しをん Miura Shiwon
脚本 渡辺謙作 Watanabe Kensaku
撮影 藤澤順一 Fujisawa Junichi
美術 原田満生 Harada Mitsuo
衣装デザイン 宮本まさ江 Miyamoto Masae
編集 普嶋信一 Fushima Shinichi
音楽 渡邊崇 Watanabe Takashi

出演 松田龍平 Matsuda Ryuhei
出演 宮崎あおい Miyazaki Aoi
出演 オダギリジョー Odagiri Jyo
出演 黒木華 Kuroki Haru
出演 渡辺美佐子 Watanabe Misako
出演 池脇千鶴 Ikewaki Chizuru
出演 鶴見辰吾 Tsurumi Shingo
出演 八千草薫 Yachigusa Kaoru
出演 小林薫 Kobayashi Kaoru
出演 加藤剛 Katoh Gou
出演 伊佐山ひろ子 Isayama Hiroko