カッコーの巣の上で

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公開日 1976/04/17  129分


★★★★★★★★ 8.0


人間の自由と尊厳を謳った名作。

精神病院が舞台で、確かに一癖二癖以上ある患者達だが、作品中でジャック・ニコルスンが言うように、世間より遥かにマシ=純粋な人間にも見えてくる。
実際、釣り船のシーンでの患者たちは本当の医者に見えるほどだ。
TVの野球中継ごっこの子供のようなはしゃぎようの微笑ましさと、社会に適応できない仲間を愛するジャック・ニコルスンの純粋さに心打たれる。

冒頭、水呑場を持ち上げようとして『やるだけはやった』という姿、『こんなところで何をしてる』という檄はチーフの胸に刻まれたのだろう。
真夜中、逃げられたにも関わらず逃げなかったのは、外も同じと思ったからか、仲間に執着してしまったからか…。
病棟を小さな社会と見た時、世間の悪意と権力を一身に集めた存在が看護師ルイーズ・フレッチャーだ。
正常に話すことができるようになったブラッド・ドゥーリフは、外界に適応することは無理だったのかもしれないが、死まで追いやった、その冷酷さに震える。
ジャック・ニコルスンに対する最初の矯正処置後に足を引き摺る姿を一瞥で無視したのは、冷酷さからなのか、演技と見破っていたのか・・・。
ルイーズ・フレッチャーに対して、病院に対して、果敢に抵抗するジャック・ニコルスンは感情的で愛すべき不良だ。
あくまで感情的、本能的なジャック・ニコルスンとルーズ・フレッチャーは好対照、管理社会の縮図にも見える。

原題に沿った印象的な邦題は、精神病院をカッコーの巣と呼ぶらしい。
カッコーは他の鳥の巣の卵を落として、自分の卵を置くという習性があり、それが狂気と見えるのだろうか?
狂気の巣を飛び立つ姿が脳裏に残る。
この悲しくもやるせない、しかし希望を残した名ラストは、結局、巣から飛び立ったのがジャック・ニコルスンではなかったということさえ暗示して強烈な余韻を残す。
チーフがマクマーフィを抱きしめるシーン…。そしてそれ以降は、思い出してさえ涙が出そうだ。
舞台が舞台だけにTV放映が少ないのが残念だ。

原題  ONE FLEW OVER THE CUCKOO'S NEST

製作国 アメリカ
製作 Fantasy Films
製作 ユナイテッド・アーティスツ United Artists Entertainment LLC
配給 ユナイテッド・アーティスツ United Artists Entertainment LLC

監督 ミロス・フォアマン Milos Forman
製作 ソウル・ゼインツ Saul .Zaentz
製作 マイケル・ダグラス Michael Douglas
原作 ケン・キージー Ken Kesey
脚本 ローレンス・ホーベン Laurence Hauben
脚本 ボー・ゴールドマン Bo Goldman
撮影 ハスケル・ウェクスラー Haskell Wexler
撮影 ビル・バトラー Bill Butler
音楽 ジャック・ニッチェ Jack Nitzsche

出演 ジャック・ニコルソン Jack Nicholson
出演 ルイーズ・フレッチャー Louise Fletcher
出演 マイケル・ベリーマン Michael Berryman
出演 ブラッド・ドゥーリフ Brad Dourif
出演 ウィル・サンプソン Will Sampson
出演 クリストファー・ロイド Christopher Lloyd
出演 ダニー・デヴィート Danny DeVito
出演 スキャットマン・クローザース Scatman Crothers