
公開日 2009/04/18 112分
『羊たちの沈黙』と『フィラデルフィア』で一躍トップディレクターの仲間入りを果たしたジョナサン・デミだが、それ以後は目立った作品もなく、『クライシス・オブ・アメリカ』は散々で、私の中では過去の人になりつつあった。
本作は面目躍如とまではいかないまでも、健在を示す作品となった。
脚本ジェニー・ルメットの実父、シドニー・ルメットから要望されたらしいが、良い切っ掛けになったようだ。
全編手持ちカメラによる映像は、アン・ハサウェイを追って相当揺れるので、私も気分は良くなかった。
特に冒頭にこれだけ揺れると、誰もが「最後までこれが続くのか」と憂鬱になるだろう。ハンディ・カメラの必要性はともかく、これはマズイ。
シドニー・ルメットの娘、ジェニー・ルメットによる脚本は、アン・ハサウェイの過去を徐々に詳らかにしていく展開に好感が持てるし、観客も乗せての盛り上がりから一転して突如落ち込むシーンに変える手口も『北の国から』か!と思ったりするほど何度も使われるが、作為的と思えるほどに悪くはない。
アン・ハサウェイの「今、母親に謝らなければ…」といった心理的切迫感なども印象に残る。
白人と黒人の結婚の設定も、ジェニー自身がアフリカ系であることから、自身の想いを強く反映したのだろう。
ただ、登場人物それぞれの表情を、順に上手く捉えたショットや、機知に富んだジョークは、どこまでが脚本なのかは判らない。
監督の手腕に因る部分も多分に伺えるので、評価は今後の別の監督作品を待ちたい。
監督は『世界一美しいホームビデオ』を目指したらしいが、そういう意図は感じ取れなかったし、後味も爽やかとかハートウォーミングといったものではないが、脇役を単なる脇でなく、十分に個性を与えて厚みを持たせているなど、家族に対する作り手の真摯な心情が感じられる。
アン・ハサウェイのシリアスな演技を始め、キャストは上手くはまっている。
また、劇中絶えず流れる音楽は素晴らしく、カメラの緻密で優しい視線が印象に残る。
原題 RACHEL GETTING MARRIED
製作国 アメリカ
製作・配給 Sony Pictures Entertainment Japan lnc.
監督 ジョナサン・デミ Jonathan Demme
製作 ネダ・アーミアン Neda Armian
製作 マーク・プラット Marc E. Platt
製作 ジョナサン・デミ Jonathan Demme
製作総指揮 キャロル・カディ Carol Cuddy
製作総指揮 イロナ・ハーツバーグ Ilona Herzberg
脚本 ジェニー・ルメット Jenny Lumet
撮影 デクラン・クイン Declan Quinn
アートディレクション キム・ジェニングス Kim Jennings
プロダクションデザイン フォード・ホイーラー Ford Wheeler
衣装デザイン スーザン・ライアル Susan Lyall
編集 ティム・スクワイアズ Tim Squyres
音楽 ドナルド・ハリソン・Jr Donald Harrison Jr.
音楽 ゼファー・タウィル Zafer Tawil
出演 アン・ハサウェイ Anne Hathaway
出演 ローズマリー・デウィット Rosemarie DeWitt
出演 ビル・アーウィン Bill Irwin
出演 トゥンデ・アデビンペ Tunde Adebimpe
出演 マーサー・ジッケル Mather Zickel
出演 アンナ・ディーヴァー・スミス Anna Deavere Smith
出演 アニサ・ジョージ Anisa George
出演 デブラ・ウィンガー Debra Winger