黒い雨

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公開日 1989/05/13  123分


★★★★★★ 6.0


井伏鱒二、原作。今村昌平、監督脚本作品。
原爆の被爆者とされ、縁遠くなった姪の縁談をまとめようと奔走する伯父伯母の姿を中心に、原爆後の数年間のヒロシマを描く。
タイトルは原爆投下後に降ったというコールタール状の「黒い雨」をさす。
直接被爆していないものの、この雨を浴び、その後市内を徘徊した姪役に田中好子、直接被爆した伯父役に北村和夫、伯母役に市原悦子を配する。

あまりにも強烈なテーマゆえか、今村作品としては、かなりアクの薄い作品である。
モノクロームの映像も投下直後の市内の惨状を映すには、カラーでは堪えないという理由が主であろうが、田舎の家の中の暗さ、外の日差しの強さ、夜の電球の薄暗さなどの陰影に富んだ画面は時代をより反映させて印象深い。

ピカの発症が迫り来る恐ろしさ、瞬く間に葬儀が続く恐ろしさは、伯母を始め、何人もの正気を失う姿で痛ましく伝わってくる。
特に、髪の毛がごっそり抜ける姪の姿、しかもその髪を冷静に見つめる姿は際立って恐ろしい。
(このシーンのセミヌードは必要ないと思うが)
姪は直接被爆を受けていないと訴え続けてきた伯父が、最後に救急車を見送る映像は、すべてを奪われたものの痛ましさというよりも、すべてを奪っていく虚脱感、空虚感を湛えてあまりあるシーンである。

原題  黒い雨

製作国 日本
製作 今村プロダクション
製作 林原グループ
配給 東映

監督 今村昌平 Imamura Syohei
製作 飯野久 Iino Hisashi
原作 井伏鱒二 Ibuse Masuji
脚本 今村昌平 Imamura Syohei
脚本 石堂淑朗 Ishidou Toshirou
撮影 川又昂 Kawamata Takashi
美術 稲垣尚夫 Inagaki Hisao
編集 岡安肇 Okayasu Hajime
音楽 武満徹 Takemitsu Touru

出演 田中好子 Tanaka Yoshiko
出演 北村和夫 Kitamura Kazuo
出演 市原悦子 Ichihara Etsuko
出演 沢たまき Sawa Tamaki
出演 三木のり平 Miki Norihei
出演 小沢昭一 Ozawa Syouichi
出演 小林昭二 Kobayashi Syoji
出演 河原さぶ Kawahara Sabu