潜水服は蝶の夢を見る

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公開日 2008/02/09  112分


★★★★★★★★ 8.0


潜水服で深海に閉じ込められたように動かなくなった身体でも想像力は蝶のように羽ばたく・・・そういった意味合いのタイトルだ。

実在したELLEの元編集長、ジャン=ドミニク・ボビー。
脳梗塞によるロックド・イン・シンドローム(閉じ込め症候群)で、左目の瞬きしか動かせなくなった男の物語だ。

冒頭30分くらいまで主人公は画面に映らない。
この作品は主人公の視線で描かれるからだ。
それはつまり、主人公に協調、同化、感情移入を強いられる手法で、観客がロックド・イン・シンドロームの不自由さを味わうことになる。
だが、神様は敢えてボビーを選んだのかと思える程に主人公は強い。
いや、確かに絶望の淵まではいくのだが、持ち前の精神でロックド・イン・シンドロームを克服していく。
(この場合の克服は回復という意味ではない。)

あれやこれやとテーマを選べる題材であるのだが、この作品は想像力の飛翔というものに絞って描き、見事に成功している。
人間にとって、知識や教養といったものがいかに大切かということを痛感させるとともに、それらを土台としたイマジネーションがあれば、どんな苦境にあっても生きていけることを示している。

登場する女優は何故か「これでもか」という程美人揃い。
身体は麻痺していても視線はスカートの裾かい!とか、『無言電話するんだろう』と言う作業員に怒る言語療法士、心で大ウケする主人公、こういったユーモアに満ちた温度差が面白い。
前半は主人公のイマジネーションの羽ばたきに心を揺さぶられるが、後半はやや緊張感に欠けていく。
それにしても、重く陰鬱になる題材を、やや捻くれたユーモアとイマジネーションで飛び越えてみせた、清々しさ覚える作品である。

キャスティングが予定されていたというジョニー・デップがやっていたら、どうなっただろうか。

原題  LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON

製作国 フランス
製作国 アメリカ
製作 Pathé Renn Productions
製作 France 3 Cinéma
製作 Kennedy/Marshall Company
配給 アスミック・エースエンタテインメント Asmik Ace Entertainment, Inc.

監督 ジュリアン・シュナーベル Julian Schnabel
製作 キャスリーン・ケネディ Kathleen Kennedy
製作 ジョン・キリク Jon Kilik
製作総指揮 ジム・レムリー Jim Lemley
製作総指揮 ピエール・グルンステイン Pierre Grunstein
原作 ジャン=ドミニク・ボビー Jean-Dominique Bauby
脚本 ロナルド・ハーウッド Ronald Harwood
撮影 ヤヌス・カミンスキー Janusz Kaminski
美術 ミシェル・エリック Michel Eric
美術 ロラン・オット Laurent Ott
衣装デザイン オリヴィエ・ベリオ Olivier Beriot
編集 ジュリエット・ウェルフラン Juliette Welfling
音楽 ポール・カンテロン Paul Cantelon

出演 マチュー・アマルリック Mathieu Amalric
出演 エマニュエル・セニエ Emmanuelle Seigner
出演 マリ=ジョゼ・クローズ Marie-Josee Croze
出演 アンヌ・コンシニ Anne Consigny
出演 パトリック・シェネ Patrick Chesnais
出演 ニエル・アレストリュプ Niels Arestrup