
公開日 2017/12/08 110分
★★★★★★ 6.0
ナチスに関わる映画は枚挙にいとまがなく、もう新たな切り口があるのだろうか、などと思っていた自分が情けない。
しかも本作は実話ベースだ。クオリティも高い。
イギリスの歴史家デイヴィッド・アーヴィングによる「アウシュビッツの大量虐殺はなかったとするホロコースト否定論」を公然と無視してきたアメリカのユダヤ人女性の歴史学者デボラ・E・リップシュタットが主人公。
彼女は、訴えられた側に立証責任がある英国で、アーヴィングから名誉棄損で提訴される。
ここから“ホロコースト否定論”を崩すために、英国人による弁護団と歴史的裁判に挑むことになる。
ホロコーストについて、肯定派と否定派があることさえ印象付けたくないという主人公。
地球は丸いし、プレスリーは死んだ。ホロコーストはあったのだ、と。
「フェイクニュース」という言葉が持てはやされるようになった今だからこそ、意義のある題材だと思う。
弁護団の中でも意見が戦わされる。
ホロコーストの被害者を裁判に立たせることの是非。
裁判で生存者と死者の声を届けることと、アーヴィングに対峙することで被害者がいかに傷つくか。
また、アーヴィングが拘るアウシュビッツのガス室にあったとされる柱の有無、その証明の論争に付き合うことの不毛さなど。
裁判自体は、トム・ウィルキンソン演じる法廷弁護士の迫力、説得力に負うところが大きい。
ただ物語は、単純に結審を描かない。
個人が信じて表現したものを嘘と断じていいものかとも。
主人公はそれに対して言及している。
表現の自由はあっても、嘘と説明責任の放棄は許されないと。
また、裁判における主人公の勝利だけでなく、弁護チームとの裁判を経た主人公の成長も描かれる。
それは、当初、良心を他人に委ねることの難しさや、アメリカ人だからという理由でお辞儀を拒んでいた姿からも明らかだ。
物語は裁判の結審後の余韻では終わらない。
法廷弁護士が辿った悲劇の現場に対する想い、降り積もる雪、印象的なラストを観客に投げかけて終わる。
原題 DENIAL
製作国 イギリス
製作国 日本
製作 BBC Films BBC Films
製作 Cornerstone Films Cornerstone Films
製作 Participant Media Participant Media
配給 ツイン
監督 ミック・ジャクソン Mick Jackson
原作 デボラ・E・リップシュタット Deborah E. Lipstadt
脚本 デヴィッド・ヘア David Hare
撮影 ハリス・ザンバーラウコス Haris Zambarloukos
美術 アンドリュー・マッカルパイン Andrew McAlpine
編集 ジャスティン・ライト Justine Wright Justine Wright
音楽 ハワード・ショア Howard Shore
出演 レイチェル・ワイズ Rachel Weisz
出演 トム・ウィルキンソン Tom Wilkinson
出演 ティモシー・スポール Timothy Spall
出演 アンドリュー・スコット Andrew Scott
出演 ジャック・ロウデン Jack Lowden
出演 カレン・ピストリアス Caren Pistorius
出演 アレックス・ジェニングス Alex Jennings