
公開日 2017/10/14 228分
★★★★★★★ 7.0
昨年観た『ナイチンゲール』が面白く、復讐劇と聞いていた本作と続けて観るのが嫌で、置いておいた作品。
初めて観るフィリピン映画は、トルストイの短編「God Sees the Truth, But Waits」から着想を得たという。
1997年、米軍の撤退後、多発する誘拐事件やマザー・テレサの死などがBGM的にラジオから流れる。
馴染みのないお国柄もあってか、思いの外、面白く観ることができた。
無実の罪で30年もの服役をした元教師の女が主人公。
服役中に夫は亡くなり、息子は失踪している。
罠に嵌めた犯人は元恋人でもあり、地方の有力者。
出獄後に身辺整理や娘との再会を果たしながら復讐の計画するのだが、計画の過程で、教会に住み着いている女や流れ者のゲイ、バロット(アヒルの卵)売りの男たちとの交流が描かれる。
30年の間に消えた家庭とは別に、疑似家族が生成されていく展開かと思いきや、そんなに甘くはなく、心に悪魔を宿した元恋人も感づき始める。
復讐劇はその本質でもある、満たされることのない虚しい顛末を辿る。
他者の犠牲の上に成立してしまった復讐劇は、思わぬこととはいえ、因果応報をみれば息子は見つからない。
228分という長尺は、もう少し短くできたとは思う。
しかし、ロングとモノクロの映像の素晴らしい効果によって、このムダに思える余白的な長さがいいともいえる。
主人公のもとに人が集まる、この教師の性分は持って生まれたものなのだろう。この人物描写の妙が本作を支えている。
フィリピンは思っていたほどのゲイ大国じゃないんだ。
バロット(アヒルの卵)を食べるのはムリ。
チラシをバラまくのはOKなのか?
世界に通じる作品をワンマンで作る才能に魅了される。
日の目を見ることのない人間の美しさを描いて、「メリル・ストリープ絶賛」も解る気がする。
原題 ANG BABAENG HUMAYO
製作国 フィリピン
製作 Sine Olivia Pilipinas
製作 Cinema One Originals
配給 マジックアワー
監督 ラヴ・ディアス Lav Diaz
原案 ラヴ・ディアス Lav Diaz
脚本 ラヴ・ディアス Lav Diaz
撮影 ラヴ・ディアス Lav Diaz
編集 ラヴ・ディアス Lav Diaz
出演 チャロ・サントス=コンチョ Charo Santos-Concio
出演 ジョン・ロイド・クルーズ John Lloyd Cruz
出演 マイケル・デ・メッサ Michael De Mesa
出演 シャマイン・センテネラ=ブエンカミーノ Shamaine Centenera-Buencamino
出演 ノニー・ブエンカミーノ Nonie Buencamino