
公開日 2018/04/07 127分
予告編で謳われている「慟哭のクライマックス」はない。
いや、出演者は慟哭するが。
残るのは深い嫌悪感、絶望感。ラストに映し出されるリボンは少年の存在の証しであり、手の届かない高さにあるという隠喩だろう。
主人公は誰もが嫌悪感を抱くであろう両親。
所謂ダブル不倫であるが、自ら与えることを二の次にして自己満足を追う姿は幼稚であり、ここ以外に幸福があるとする考えは愚かである。
子供の顔を見ることよりもスマホにのめり込む母親には人間としての責任感すら欠落している。
自分が邪魔ものと知って声を押し殺して泣く子供の哀れさ、やるせなさ。
勿論、世間には子供や妻や夫を愛せないということはあるだろう。
虐待のニュースなどを見るにつけ、そのようなケースは増えているのかもしれない。
その子を最も真剣に捜索するのは、会ったこともないボランティアであり、その子のその名前を呼ぶのもボランティアだけという不条理さ。
家族を邪魔もの扱いし、子供を押しつけ合う二人に幸福な"次"がある筈はない。
"次"へ進むと言った妻の、"進むことのできないルームランナー"。
次の子供も疎んじてベビーサークルに入れてしまう夫の虚ろさは当然の帰結である。
遺体で見つかったのは息子なのだろうか。
幼い子供とその損傷度による錯乱なのだろうか。
妻が夫に叫ぶ「渡すつもりはなかった」という嘘。
否定もしない夫。
つまりはすべて嘘という印象は受ける。
DNA鑑定を拒否するのも「ある」のだ。
ただそうすると、予め夫婦で打ち合わせていたことになり、そのシーンを省いているのは、誠実な演出とは思えない。
「どちらとも取れる」演出を狙っているのかもしれないが、子供が出来た不幸は延々述べさせるのに、整合性が取れていない印象を受ける。
画は総じて美しい。特に廃墟や窓の景色。
TVから流れるウクライナとロシアの情勢は、単なるニュースではなく、思い遣りの欠如から発展したものとしての拡大解釈を促すものと思う。
サスペンス・タッチではあるものの緩やかな展開は眠くもあった。
ラブレス。
愛の反対は無関心。
傑作というよりも心に刺さる作品だった。
原題 NELYUBOV
製作国 ロシア
製作国 フランス
製作国 ドイツ
製作国 ベルギー
製作 Fetisoff Illusion
製作 Non-Stop Productions
配給 アルバトロス・フィルム
配給 クロックワークス
配給 STAR CHANNEL MOVIES
監督 アンドレイ・ズビャギンツェフ Andrey Zvyagintsev
製作 アレクサンドル・ロドニャンスキー Alexander Rodnyansky
製作 セルゲイ・メルクモフ Sergey Melkumov
製作総指揮 ヴァンサン・マラヴァル Vincent Maraval
製作総指揮 パスカル・コシュトゥー Pascal Caucheteux
製作総指揮 グレゴワール・ソルワ Gregoire Sorlat
脚本 アンドレイ・ズビャギンツェフ Andrey Zvyagintsev
脚本 オレグ・ネギン Oleg Negin
撮影 ミハイル・クリチマン Mikhail Krichman
美術 アンドレイ・ポンクラトフ Andrey Ponkratov
編集 アンナ・マス Anna Mass
音楽 エフゲニー・ガルペリン Evgueni Galperine
出演 マルヤーナ・スピヴァク Maryana Spivak
出演 アレクセイ・ロズィン Aleksey Rozin
出演 マトヴェイ・ノヴィコフ Matvey Novikov
出演 マリーナ・ヴァシリイェーヴァ Marina Vasilyeva
出演 アンドリス・ケイシス Andris Keiss
出演 アレクセイ・ファティフ Aleksey Fateev