
公開日 2019/03/22 128分
スパイク・リーによるアメリカ告発映画といっていいだろう。
それくらいに尖った映画。
物語は70年代に黒人の刑事が白人至上主義団体KKKに潜入捜査した実話を元に描かれている。
電話でKKKへのアポ取りに成功した黒人刑事の身代わりとなって白人の刑事が潜入することになる。
このアポ取りの経緯からして笑えるのだが、潜入する白人刑事もユダヤ系であるため、反ユダヤでもあるKKKによる身上調査が一転して恐ろしい展開となる。
白人としてKKKに潜入することで、自己のアイデンティティを突きつけられることになる脚本の上手さ。
射撃訓練の標的となった黒人の人形の中を歩く黒人刑事の悲哀に満ちた映像の上手さも際立っている。
だが、"上手い"ことが"上品"に繋がらないのがこの監督の手腕、トランプ大統領の映像などを歪に下品に放り込んでくる。
トランプを映すことでドキュメンタリーぽくなるのもお構いなしなのだ。
KKK一味の爆破によって車が転覆する顛末には、現代から見るとこじんまりしたアクションの印象を受けてしまうが、当時としては、また実話としてはここまでが限界なのだろう。
終盤、燃え盛る十字架を見上げる白頭巾に目出しの男が大写しになる。
公開当時からこの男の正体が議論されたそうだが、どうも映像的にアダム・ドライバーらしい。
アダム・ドライバーは元々KKKだったとか、二重スパイ的にKKKから潜入しているとか、KKK潜入後に洗脳されたとか、いろいろと思い巡らせてみたが、どう考えても辻褄が合わない。
「身近な意外な人間がKKKにいる」ことの暗喩と捉えるべきなのだろう。
オスカー候補となったなった本作であるが、『グリーンブック』受賞の発表時にスパイク・リーは怒りの表情で席を立ったらしい。
それは自作が選ばれなかったことに対してではなく、"白人の救世主"映画が受賞したことへの怒りの表れとのことだ。
オープニングいきなりの『風と共に去りぬ』で度肝を抜かれるのだが、映画を愛する監督ゆえに作品中に映される『国民の創生』のような悪しきプロパガンダ作品の罪深さを理解した上で、逆手に取る作品を作り続けているのだろう。
本作で描かれる70年代から半世紀を経ても悲劇は止まず、助長する世相さえ窺えるようになった今、甘っちょろさ抜きで作るべきとして作られた作品だ。
原題 BLACKKKLANSMAN
製作国 アメリカ
製作 Focus Features
製作 Legendary Pictures
製作 Perfect World Pictures
配給 パルコ PARCO Co., Ltd.
監督 スパイク・リー Spike Lee
製作 スパイク・リー Spike Lee
製作 ジェイソン・ブラム Jason Blum
製作 ジョーダン・ピール Jordan Peele
脚本 スパイク・リー Spike Lee
撮影 チェイス・アーヴィン Chayse Irvin
美術 カート・ビーチ Curt Beech
衣装デザイン マーシー・ロジャース Marci Rodgers
編集 バリー・アレクサンダー・ブラウン Barry Alexander Brown
音楽 テレンス・ブランチャード Terence Blanchard
出演 ジョン・デヴィッド・ワシントン John David Washington
出演 アダム・ドライヴァー Adam Driver
出演 ローラ・ハリアー Laura Harrier
出演 トファー・グレイス Topher Grace
出演 コーリー・ホーキンズ Corey Hawkins
出演 ライアン・エッゴールド Ryan Eggold
出演 アレック・ボールドウィン Alec Baldwin