公開日 2019/03/09 135分
タイトルはイタリアではなく、メキシコ・シティのコロニア・ローマ。 とにかく全編モノクロの映像が美しい。
床のタイルを映し出したオープニング。 そこに水が撒かれると、水は天窓を映し出す。
天窓を横切る飛行機。
また水が撒かれる度に天窓が映り、消える。
揺れ動き上書きされていく絵画のように印象的だ。
飛行機はこの作品の大きなモチーフであり、ここではない自由などこかへの憧れを映しているように思える。
そしてラストでは見上げた空を飛行機がまた横切っていく。
オープニングではうつむいていた顔が、ラストには空を仰ぐことになる。
とにかく、構図。横から水平移動で映す構図も独特だ。 通りを挟んだ向こう側を歩く。
赤ん坊の置かれるベッドも水平に向こう側。
波に飲まれる子供を救う構図は、波を横から映す凄い映像だ。
ヒロインが彼氏を探しに訪れる街、その広さと奥行き、遠くに人間ロケットが飛んでいたり、の画には感嘆する。
また構図とともに背景の音も印象的であり、波の音やデモの群集の騒乱の音も極端にデフォルメが効いた効果音である。
監督自身の自伝的作品らしい。 おそらくその意味合いが強いのだろう。
貧富の壁、人種の壁を乗り越えて繋がる意味を探る批評もあるが、私にはそこまでの深掘りを覚えなかった。
それはヒロインであるメイドの暮らし、朝起きてから夜眠るまでの生活のリズムがイマイチ感じないからである。
物語の終盤ではヒロインは家族と同様に旅行に招かれる。 それは家族からの愛情であろうが、メイドはメイド。
家に戻れば家族の世話をする日々が待っている。
メイドが単なる雇用契約なら問題はないのだろうが、貧しい元恋人から「召し使い」と呼ばれることからも、この時代では貧困に基づいた侮辱的な仕事の側面もあったのだろう。 その暮らし、おそらく何があっても変わることのない毎日を見せずに、上面だけを映して貧富の壁や人種の壁の融和といわれても理解はし難い。
シナリオは凄く練られていて、１度の鑑賞で緻密に追うのは大変に感じる。
赤ん坊の死産については、病院での地震は予兆の演出だろうし、正月に酒を飲む前に一度こぼしてしまったのに、また敢えて飲んでしまうのはヒロインの投げやりな思いを映しているのだろう。
このような結果を暗示する伏線は至るところに張られている。
主人が大型車をクラッシックを大音響で流しながら屋敷内に何度も切り返して納車する様子が描かれるが、本人の顔を敢えて映さず、人柄を感じさせる演出で伏線的にその性格が表現されている。 結果は予想通りの見栄っ張りの自己中心男なのだが。
この主人に限らず、出演する男性はみんなクズだ。
最初は溝が感じられる妻とヒロインなのだが、 お互いに悪く思っている訳でなく、微妙に思い遣っている表現が巧い。
物語にはメキシコで1971に起きたの反政府デモ「血の木曜日事件」が織り込まれており、少しは時代背景の予備知識があったほうがよいだろう。
Netflix配信の本作は映画なのか？という議論は今後も続くだろう。
私自身は映画館で観たから映画だと言い切るが、本来のNetflix配信をスマホで観たなら映画とは言い辛い。
作品は同一なのに鑑賞媒体での区分けするのが正しいのかは疑問だが、基準がまだ定まっていないのが現状だ。
物語自身に劇的な展開はなくても構わない。
ただ、ラストのメイドに対する賛辞にあるように、 この時代の雇用者と使用者の関係上、作品全体がヒロインに対して「上から目線」を感じてしまったのが残念。
原題 ROMA
製作国 メキシコ
製作国 アメリカ
製作 Participant Media
製作 Esperanto Filmoj
配給 Netflix
監督 アルフォンソ・キュアロン Alfonso Cuaron
製作 ガブリエラ・ロドリゲス Gabriela Rodriguez
製作 アルフォンソ・キュアロン Alfonso Cuaron
製作 ニコラス・セリス Nicolas Celis
製作総指揮 ジェフ・スコール Jeff Skoll
製作総指揮 デヴィッド・リンド David Linde
製作総指揮 ジョナサン・キング Jonathan King
撮影 アルフォンソ・キュアロン Alfonso Cuaron
編集 アダム・ガフ Adam Gough
編集 アルフォンソ・キュアロン Alfonso Cuaron
出演 ヤリッツァ・アパリシオ Yalitza Aparicio
出演 マリーナ・デ・タビラ Marina de Tavira
出演 マルコ・グラフ Marco Graf
出演 ダニエラ・デメサ Daniela Demesa
出演 カルロス・ペラルタ Carlos Peralta
出演 ディエゴ・コルティナ・アウトレイ Diego Cortina Autrey