
公開日 2019/02/15 120分
ヨルゴス・ランティモスのメジャー4作目。
前々作『ロブスター』の面白さから一転した前作『聖なる鹿殺し』は解り辛さが増してしんどかった。
どの作品も基本的にはコメディの部類に入るのだろうが前作が厳しかったことと、18世紀初頭のイングランド王朝が舞台ということでかなり躊躇してしまった。
だが、結果的には面白かった。
ヨルゴス・ランティモスが脚本に関わらなかったことが、悪い意味でのアクが少なく見易いという噂の通りなのかもしれない。
元々は女王の寵愛を一手に受け、実質の権力者であったレイチェル・ワイズのもとに、没落した従妹のエマ・ストーンが訪れ、宮殿の召使として抱えたことから物語は始まる。
知力と才覚に溢れたレイチェル・ワイズ。
政治や戦略にも長け、百戦錬磨のような肝の座りよう。
論理性のない女王をサポートしてきたのに、それが仇となり結局は自分の論理的な説明が女王には通じない。
ウサギが嫌いなのは既に自分との共通点を見いだしていたのか。
若く本能的な機微に富んだエマ・ストーン。
窮地に陥った瞬間、とっさに陛下の兎に「可愛い!」が出る凄み。打算よりも早く動ける無邪気さと機転の早さ。
社会の底辺で泥水を啜ったものには躊躇がないということか。
"安定"が最高の価値観となり、貴族の地位まで手にするが、どこまでいっても"安定"などないこと、ウサギと同等であることに気づかされる。
辛い経験を経てきた女王であるゆえにか、その思考は複雑で気まぐれ。
時に子供のように怯えるかと思えば高圧的になる。
確たるの信念もなく、予想外の行動を取る。
ごたごたと広い王宮の室内を歪に一望する魚眼レンズ。
その歪んだ広さが効果的であり、気持ち悪くもあり。
不安定で神経に触る音楽が延々と続いたり(バイオリンとピアノを1音ずつ繰り返す)、
不穏さを予感させるオーバーラップが掛かったり。
男性が化粧をし女性はすっぴんというアイロニーや、観客の想像をかき立てる無表情のクローズアップ。
延々と続く音の意味を読み解くことなど、映画的に辛くも楽しい側面も備えている。
延々と続くクローズアップの表情の中身を解くのも映画的に辛く楽しい。
しんどさと面白さが同居した作品だ。
現代にも通ずる1%の富裕層の愚かしさ。
アヒルのレースはともかく、裸のデブにミカンを投げつけるゲームのえげつなさ。
民衆のことなんかよりも目先で踊るお気に入りによって、法案を覆してみせる気持ち悪さ。
物語は章立てが効いており、展開が解り易い。
ローソクの映像なども含めて、章立ては『バリー・リンドン』の影響らしい。
お得意の「痛い痛い映像」は本作でも健在で、分厚い本で自分の顔をバンバン叩いて鼻血を出したりする。
気持ち悪い部分が多いのに面白い。そして多く観客がそれを認めている。
その評価が今や有名俳優を揃え、オスカーノミネートもされ、メジャーロードショーとなっている証なのだろう。
原題 THE FAVOURITE
製作国 アイルランド
製作国 アメリカ
製作国 イギリス
製作 Fox Searchlight Pictures
製作 Scarlet Films
製作 Film4
製作 Waypoint Entertainment
配給 20世紀フォックス映画
監督 ヨルゴス・ランティモス Giorgos Lanthimos
製作 セシ・デンプシー Ceci Dempsey
製作 エド・ギニー Ed Guiney
製作 リー・マジデイ Lee Magiday
製作 ヨルゴス・ランティモス Giorgos Lanthimos
脚本 デボラ・デイヴィス Deborah Davis
脚本 トニー・マクナマラ Tony McNamara
撮影 ロビー・ライアン Robbie Ryan
プロダクションデザイン フィオナ・クロンビー Fiona Crombie
衣装デザイン サンディ・パウエル Sandy Powell
編集 ヨルゴス・モヴロプサリディス Yorgos Mavropsaridis
出演 オリヴィア・コールマン Olivia Colman
出演 エマ・ストーン Emma Stone
出演 レイチェル・ワイズ Rachel Weisz
出演 ニコラス・ホルト Nicholas Hoult
出演 ジョー・アルウィン Joe Alwyn
出演 マーク・ゲイティス Mark Gatiss
出演 ジェームズ・スミス James Smith