
公開日 2018/02/23 93分
トーマス・カリナンの原作小説を1971年にドン・シーゲル監督、クリント・イーストウッド主演で映画化された『白い肌の異常な夜』の再映画化。
硬派のドン・シーゲルから一転して、ガーリー・カルチャーの旗手ソフィア・コッポラがメガホンを取る。
『白い肌の異常な夜』は未見。
オープニングに大きく映し出される「THE BEGUILED」というピンクの筆記体のタイトルが「監督は私よ」と印象づける。
舞台は南北戦争時、南部の戦場の間近で疎開できずにいる僅かな生徒を抱えた女子寄宿学校。
戦時中とはいえ、この時代に教師も女性ばかりという状況は不自然にも感じる。
そこに負傷した脱走兵が運び込まれる。
端正な顔立ちと礼儀正しい負傷兵に対する期待、憧れ、恋心。それに反する畏怖。
ここから連れ出してくれる期待を持つ者、連れ出される困惑を持つ者。
負傷兵にしてみれば、南軍に引き渡されるのも北軍に引き渡されるのもマズい状況だ。
それぞれの立場の思惑の織り成す綾は、予想を超えた展開へと導いていく。
心の動揺を抑えなければならない寄宿学校という舞台。
脱走兵にしてみれば、居座るならば全員に快く思われねばならない。
密かに脱出するならば誰かを誘惑して協力させねばならない。
サスペンス作品とは知っていたが、本作には今時の大仰なアクションも、チリチリと焼けるような心理戦も見られない。
特にニコール・キッドマンは、負傷兵への情欲はおろか、教員への嫉妬も、その教員を連れ出される焦りも見せない。
喜怒哀楽を見せず、淡々と負傷兵の退出を進める姿には、逆に抑えつけた心理を感じざるを得ない。
怒りのタガが外れてしまった負傷兵への対策を相談する会話。
(キノコの会話)その以心伝心の怖いこと。怖いこと。
そして、ことが終わった後も裁縫の授業のように淡々と。
自然光を生かした映像が主流となったのはいいが、本作はあまりにも暗い。
(劇場でも「暗い」の批判は多い)
蝋燭の明かりの中での着飾ったディナーの、抑えたエロティックさなどはいいのだが。
元々色気の薄いキルスティン・ダンストの頑張りようや、子どものくせに怠惰なエロティックさを醸すエル・ファニングなどのキャスティングには目を奪われた。
サスペンス・スリラーにも関わらず、ソフィア監督は相変わらずのスローテンポで序盤から暫くは相当眠かった。
後半から持ち直すものの、このテンポと画面の暗さが何より残念。
原題 THE BEGUILED
製作国 アメリカ
製作 American Zoetrope
製作 FR Productions
配給 アスミック・エースエンタテインメント
配給 STAR CHANNEL MOVIES
配給 東北新社
監督 ソフィア・コッポラ Sofia Coppola
製作 ユーリー・ハンレイ Youree Henley
製作 ソフィア・コッポラ Sofia Coppola
製作総指揮 フレッド・ルース Fred Roos
製作総指揮 ロマン・コッポラ Roman Coppola
脚本 ソフィア・コッポラ Sofia Coppola
撮影 フィリップ・ル・スール Philippe Le Sourd
プロダクションデザイン アン・ロス Anne Ross
衣装デザイン ステイシー・バタット Stacey Battat
編集 サラ・フラック Sarah Flack
音楽 フェニックス Phoenix
出演 コリン・ファレル Colin Farrell
出演 ニコール・キッドマン Nicole Kidmon
出演 キルステン・ダンスト Kirsten Dunst
出演 エル・ファニング Elle Fanning
出演 ウーナ・ローレンス Oona Laurence
出演 アンゴーリー・ライス Angourie Rice
出演 アディソン・リーケ Addison Riecke
出演 エマ・ハワード Emma Howard