ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ

店舗イメージ

公開日 1984/10/06  205分


★★★★★★★★ 8.0


元々酷評された2時間版は製作側が切り刻んだもので、3時間版が通常版とされている。
今回は更に未公開フィルムを加えたディレクター版で、ストーリー的にかなり解り易くなっている。
ただ追加された部分の画質は非常に悪い。

マックスの最後については様々な憶測があるようなので、自分なりの考察を述べておく。
屋敷内には様々な伏線が張られている(ように見える)。
監視カメラが多数ある。拳銃自殺すれば銃声は外にまで聞こえると言っている。
財産贈与を得た組合長が殺しに戻るとは思えない。
清掃車はたまたま居合わせたとは思えず、秘密の抜け道の外に居ることを思えば、マックスが用意したと見るのが妥当だろう。

自殺説について。
一見、自殺っぽくは見える。
ただ、敢えて屋敷を出てヌードルズの目の前で清掃車に飛び込むという必然性が見えない。
ヌードルズと話し合っている最中に部屋の中で拳銃自殺すればいい。

張られた伏線について。
マックスは監視カメラからヌードルズの来訪を知った筈。
背を向けながらの「俺を撃てよ」の台詞は、戻って来る筈のない組合長に当てた言葉ではなく、ヌードルズと知っていて言ったと思われる。
後の会話でもマックスはヌードルズに撃たれて死ぬことを望んでいたと見える。
そもそも隠遁していたヌードルズを呼び寄せた理由はそこなのだろう。
ではなぜマックスは自分を殺した後の抜け道を教え、且つそこに手下と思われるトラックを待たせたか。
一つはヌードルズの逃亡を助けるため、もう一つはヌードルズを殺すため。
個人的には後者でないかと考える。銃声はトラックにまで聞こえるので、銃声がすれば逃げて来た奴を始末しろよと。
だが銃声がなかったため、ヌードルズには何もしなかった。
そして次にマックスが出て来て逃げた。
とはいえ、マックスの行き先は暗い闇で、明るい未来は待ち構えていない。
対向して来る若者のクラッシックカ―が過去と未来を暗示している。

ラストのヌードルズの笑顔について。
ヌードルズはマックスが死んでいないことに気が付いていたと見るのが妥当だろう。
自らの裏切り、それによる仲間二人の死、しかしマックスまでは死んでいない。
ここから来る複雑な想いと阿片の作用が生み出した印象的なラストシーンは、圧倒的な悔恨と僅かな救いを描いたストップモーションのお手本だろう。

本作は脚本家が多い割に台詞が少ない作品で、舌足らずの印象が強い。
共有資産は、一部が死んだ仲間の墓に使われ、残りがヌードルズに戻されたのだろうが、
札束の帯に「次の仕事の前金」と書かれている理由が解り難い。
次の仕事はマックス(依頼者自身)の殺しなのだろうが、金額の一部が前金で一部が共有資産なのだろうか。解り難い。

その前金を持ち運ぶヌードルズの頭上に飛んでくるフリスビーなど意味の分かり難い表現も多い。
3つの時制を行き来する展開もスマートな演出とは感じず、どちらかというとグダグダ感の方が強い。

延々と鳴り続ける電話の音。ジェニファー・コネリーの美少女っぷり。
食欲が性欲に勝る貧しく飢えた少年。

ヌードルズがデボラをレイプした理由は、突発的な性欲などではない。
マックスもデボラを愛している。だがデボラはヌードルズを愛している。
ただマックスもデボラも上昇志向が強く、現状に満足してデボラを拘束する自分では上手くいかないことはお互いに見えている。
マックスのもとへやるための手段だったのだろう。
結果的にマックスがデボラと結婚することはなく内縁の妻とし、政治家としてまた女優として大成し、子どもも授かり上手くいったということなのだろう。

全体的に表現は懐古的で感傷的といえるほどに情緒的。
エンニオ・モリコーネのスコア、アマポーラやイエスタディの音楽も過剰なほどに煽る。
表現には目を見張る演出もあれば、よく解らないものも多い。

おそらくセットであろうマンハッタン橋の映像を始めとする3時代の映像は、251分の長尺とも合わせて大作と呼ぶには十分な迫力。

破綻していると揶揄されるストーリー。
グダグダ感はあるが籠った熱が伝わってくる。
ゴッドファーザーやアンタッチャブルのように、まるで洗練されていなくても名作となり得る典型だ。

原題 ONCE UPON A TIME IN AMERICA

製作国 アメリカ
製作 The Ladd Company
製作 Warner Bros. Pictures
製作 Producers Sales Organization (PSO)
配給 東宝東和 TOHO-TOWA Co.,Ltd.

監督 セルジオ・レオーネ Sergio Leone
製作 アーノン・ミルチャン Arnon Milchan
製作総指揮 クラウディオ・マンシーニ Claudio Mancini
原作 ハリー・グレイ Harry Grey
脚本 レオナルド・ベンヴェヌーチ Leonardo Benvenuti
脚本 ピエロ・デ・ベルナルディ Piero De Bernardi
脚本 エンリコ・メディオーリ Enrico Medioli
脚本 フランコ・アルカッリ Franco Arcalli
脚本 セルジオ・レオーネ Sergio Leone
脚本 フランコ・フェリーニ Franco Ferrini
撮影 トニーノ・デリ・コリ Tonino Delli Colli
音楽 エンニオ・モリコーネ Ennio Morricone

出演 ロバート・デ・ニーロ Robert DeNiro
出演 ジェームズ・ウッズ James Woods
出演 エリザベス・マクガヴァン Elizabeth McGovern
出演 ジェニファー・コネリー Jennifer Connelly
出演 ダーラン・フリューゲル Darlanne Fluegel
出演 トリート・ウィリアムズ Treat Williams
出演 チューズデイ・ウェルド Tuesday Weld
出演 バート・ヤング Burt Young