
公開日 2018/07/27 107分
『ボーダーライン』脚本のテイラー・シェリダン初監督作品。
西部開拓地域の現代を描いた3作品、『ボーダーライン』『最後の追跡』と本作は、ストーリーに関連性はないものの「フロンティア三部作」とされているらしい。
とにかく脚本が素晴らしい。
過去を激しく打ち明ける主人公に対して「指だけ指してトイレの場所を知らせて」という台詞。
ネイティブ・アメリカンである被害者の父親が自分の死に化粧を「習う人がいないから自分でやった」という台詞。
主人公が被害者の父親と会った時に掛ける「よう」という声にまで神経が行き届いており、枚挙にいとまがない。
自らを「ハンター」と呼ぶ主人公はワイオミング州ウィンド・リバー保留地のFWS(合衆国魚類野生生物局)の職員であり野生動物の保護管理が仕事らしい。
狼などを撃って山羊などを保護しているのだ。
逆さに掲げられた星条旗が予告する通り、物語が進むにつれて保留地の実情が次第に明らかになってくる。
元々は豊かな土地で暮らしていたにも関わらず、国政によって雪と氷の不毛の保留地に追いやられたこと。
今なお保留地にはごく少数の警察官しか居らずその権限も限られていること。
死体からはレイプが見て取れるにも関わらず、直接の死因である凍死のみが死因とされること、などなど。
採掘上であわや銃撃戦というシーンでFBIが『ここで警察権を持つのは私だけ』というシーンは象徴的だ。
『ボーダーライン』でのドゥニ・ヴィルニューブの映像も素晴らしいが、本作でトレーラーハウスをノックするドアの表と裏で時世がジャンプする表現は、脚本家ならではアイデアであり、謎解き以上の見事な効果を生んでいる。
「あんなにあっけなく同僚を殺すか?」とも思ったが、ネイティブ・アメリカンへの侮蔑感情やその辺境地に居ることの絶望感が底辺にあるのは間違いない。
ラストに「失踪女性の統計さえない」字幕が出るが、これもまた法治された土地(国)ではない証明である。
告発的な側面を持つフロンティア三部作については、切り込みが浅いという指摘もあるようだが、「説教臭い映画なんて誰も観たいと思わない」という監督の思惑は、娯楽との両立という難しい課題を克服した見事な佳作である。
原題 WIND RIVER
製作国 アメリカ
製作 Acacia Filmed Entertainment
製作 Savvy Media Holdings
製作 The Fyzz Facility
監督 テイラー・シェリダン Taylor Sheridan
製作 ベイジル・イヴァニク Basil Iwanyk
製作 ピーター・バーグ Peter Berg
製作 エリカ・リー Erica Lee
原作 ジョン・ピアースン John Pearson
脚本 テイラー・シェリダン Taylor Sheridan
撮影 ベン・リチャードソン Ben Richardson
プロダクションデザイン ニール・スピサック Neil Spisak
衣装デザイン カリ・パーキンス Kari Perkins
編集 ゲイリー・ローチ Gary Roach
音楽 ニック・ケイヴ Nick Cave
音楽 ウォーレン・エリス Warren Ellis
出演 ジェレミー・レナー Jeremy Renner
出演 エリザベス・オルセン Elizabeth Olsen
出演 ジョン・バーンサル Jon Bernthal
出演 ギル・バーミンガム Gil Birmingham
出演 ケルシー・アスビル Kelsey Asbille