セールスマン

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公開日 2017/06/10  124分


★★★★★★ 6.0


アスガー・ファルハディ監督作品。
本作は『別離』以来2度目のアカデミー外国語映画賞作品であり、カンヌ映画祭でも脚本賞と主演男優賞を受賞となれば、もう名匠と呼んで間違いないだろう。

前作『ある過去の行方』が芳しい評価でなかったせいか、本作の舞台は『別離』と同様のイランに戻されている。
私自身、『別離』で受けた感銘から『ある過去の行方』を劇場で鑑賞したのだが、その幻滅感が拭えずに、本作はDVD鑑賞となったのだ。

本作も、この監督・脚本の特徴でもある「暮らしの中で突然起こる事件(犯罪)と、そこから広がる波紋と謎解き」が物語の核となっている。

犯罪に使われた車を突き止める方法など、謎を追う展開も ミステリータッチで飽きさせない。
しかし主人公の私的な調査は、進むにつれて私刑へと転がっていき、やがては抜き差しならない結末を迎える。
この意外な犯人と動機は、ここから物語を作り始めたのかと思うほどに練られていて面白い。
私怨から容易に私刑が起こり得る社会の表現にも驚くが、誰もが納得できる裁き(私刑)などないことを示しながら、波紋に呑まれた人々の不明瞭な閉塞感、どんづまり感が半端なく重い。

イランにおける世界的に普遍的な部分と、独特な事情(宗教や男尊女卑的な社会など)が深く関わっているため、「なんでこうなるの?」という苛立ちも覚えるものの、 日本の常識(同じ目線)で物事を判断することは許されない。

主人公の夫婦は舞台劇役者で映画のタイトルでもある劇中劇「セールスマンの死」の出演者である。
劇中劇と作品内の現実が上手くリンクしないように思えるのは残念。
私の観方が浅いのだろうが解り辛い。
あったかもしれない幸福な未来に対して、どこで踏み間違えたのか分からない絶望感は 「セールスマンの死」 と繋がっているような気もするのだが。

原題 FORUSHANDE

製作国 イラン
製作国 フランス
製作 ARTE France
製作 Arte France Cinéma
製作 Doha Film Institute
製作 Farhadi Film Production
製作 Memento Films Distribution
製作 Memento Films Production
配給 スターサンズ STARSANDS CO.,Ltd.
配給 ドマ DOMA Inc.

監督 アスガー・ファルハディ Asghar Farhadi
脚本 アスガー・ファルハディ Asghar Farhadi
撮影 ホセイン・ジャファリアン Hossein Djafarian
編集 ハイデー・サフィヤリ Hayedeh Safiyari
音楽 サッタル・オラキ Sattar Oraki

出演 シャハブ・ホセイニ Shahab Hosseini
出演 タラネ・アリドゥスティ Taraneh Alidoosti
出演 ババク・カリミ Babak Karimi
出演 ミナ・サダティ Mina Sadati