
公開日 1977/10/29 151分
符牒に沿った連続殺人とそれを追う金田一を並行にスタイリッシュに描く市川作品に対して、松竹作品である本作は事件の当事者(萩原健一)を中心に物語は進む。
金田一(渥美清)はストーリーの緩急と解説に作用する程度で、物語には切り込んでこない。
『犬神家の一族』の、湖から突き出た足やスケキヨの映像と比べても、山崎努の32人斬りのシーンはショッキングで怖い。
公開当時、この惨殺シーンで煽った「祟りじゃあ」の宣伝は、角川の金田一シリーズを凌駕するほどの勢いがあったものだ。
ラストの屋敷の炎上シーンなどの凄い映像がある一方で、落ち武者の首など、所々でコメディに陥りそうな映像が散りばめられるのが辛い。
市川版のあくまでミステリータッチに対抗するのではなく、血脈の悲劇という"ドラマ"を中心に据えている。
公開当時の大ヒットはまだドラマ仕立てがウケた時代だったというのもあるだろう。
「石坂浩二」対「渥美清」というような比較論もよく見掛けるが、描き方が大きく異なるのだから不毛な比較だと思う。
萩原健一と小川真由美が鍾乳洞の中を名曲「道行のテーマ」を背景に歩き続けるシーンは秀逸。
初めて八つ墓村を見下ろした瞬間から「ここに住む」と囚われていた小川真由美の、この世の因縁から逃れようとする道行き(駆け落ち)は悲哀に満ちている。(結局、叶わないが)
小川真由美の白塗りは、山崎努の狂気と重ねるためのメイクなのだろうが、狂気を表現する符牒は他になかったのだろうか。
今なら特殊技術で表現は変えられたかもしれないが、能・歌舞伎風メイクに見えてしなう。
角川の金田一シリーズのヒロインは美人女優が名を連ねるが、本作の小川真由美は勝るとも劣らない魅力を見せる。
彼女なしには本作の成功はなかっただろう。
製作国 日本
製作 松竹 Syochiku
配給 松竹 Syochiku
監督 野村芳太郎 Nomura Yoshitarou
製作 野村芳太郎 Nomura Yoshitarou
製作 杉崎重美 Sugisaki Kiyomi
製作 織田明 Oda Akira
原作 横溝正史 Yokomizo Seishi
脚本 橋本忍 Hashimoto Shinobu
撮影 川又昂 Kawamata Takashi
美術 森田郷平 Morita Kyouhei
衣装デザイン 鈴木康之 Suzuki Yasuyuki
衣装デザイン 原島正男 Harashima Masao
編集 太田和夫 Ohta Kazuo
音楽 芥川也寸志 Akutagawa Yasushi
出演 渥美清 Atsumi Kiyoshi
出演 萩原健一 Hagiwara Kenichi
出演 小川眞由美 Ogawa Mayumi
出演 花沢徳衛 Hanazawa Tokue
出演 山崎努 Yamazaki Tsutomu
出演 山本陽子 Yamamoto Youko
出演 市原悦子 Ichihara Etsuko
出演 中野良子 Nakano Ryoko
出演 加藤嘉 Kato Yoshi
出演 吉岡秀隆 Yoshioka Hidetaka