スリー・ビルボード

店舗イメージ

公開日 2018/02/01  116分


★★★★★★★★ 8.0


いや、よかった。
久し振りに圧倒された映画だった。

私の場合、鑑賞前にある程度の情報を仕入れることが多く、その情報を元に鑑賞の是非を判断したりもする。
本作ではオープニングからどこかウェスタンを思わせるカット割りと展開で、鑑賞前の予想を痛快に裏切っていく展開が心地いい。
「あり得ない!」、「そこまでやるか?」と思うほどの展開ではあるものの、娯楽映画の範囲内だと思う。

3枚の看板から始まる物語ではあるが、発端はそれよりも前の、主人公の娘のレイプ焼殺という悲惨な事件から始まる。
物語の終盤に表される「怒りは怒りを来たす」の通り、怒りは次々と波紋を広げていく。この作品は怒りの連鎖の物語だ。
だが、その一方でそれぞれが見せる「理解や赦し」が、この暴力的な作品に品格を与えている。

主人公は途方もなく毒を撒き散らし、暴れ回るが、そうするしかない自分、嫌な自分をも理解している。警察署襲撃を頂点に次第に穏やかになっていく気配は、寛容なのか、諦観なのか。
一方、警察署長は主人公に激しく糾弾されながらも、反発も無視もせず、理解し対応しようとする。この心情が死を目の前にしたことから生まれるものか、元々持ちあわせているものかなのか分からないが、おそらくは後者なのだろう。
保安官に至っては、物語の前半とラストでは別人のようである。
大火傷を負わせた相手、失職の元凶とも思える相手に加担しようとまでしている。

誰もが悪人であり善人でもある。登場人物全員がその切り口で鮮やかなほど色彩が変わる。これほど人間の多面性を描いた作品もなかなかないと思う。
この目まぐるしく変わる展開の果てにプッツリと終わるラスト。
二人が向かう男こそが真犯人ということも充分に予想はできるし、そうあって欲しいとも思う。だがその予想も裏切られるのかもしれないが。
そんな余韻を楽しむことのできる作品でもある。
ネット上で顕著な自己主張できない世相。空気を読むことや忖度する風潮に対して3枚の広告は一石を投じているようにも見える。
 
たたき込む展開、心情の豊かさ、罪と罰、怒りと赦しを巧みに描いたマーティン・マクドナーは見事。フランシス・マクドーマンド(ワーカーズ・ファッションがかっこいい)を始めとした主演3人の存在感でオスカー最有力間違いなしの作品である。

原題 THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI

製作国 イギリス
製作国 アメリカ
製作 Blueprint Pictures
製作 Film4
製作 Fox Searchlight Pictures
配給 20世紀フォックス映画 20th Century Foxd.

監督 マーティン・マクドナー Martin McDonagh
製作 グレアム・ブロードベント Graham Broadbent
製作 ピーター・チャーニン  Peter Czernin
製作 マーティン・マクドナー Martin McDonagh
製作総指揮 バーゲン・スワンソン Bergen Swanson
製作総指揮 ダーモット・マキヨン Diarmuid McKeown
製作総指揮 ローズ・ガーネット Rose Garnett
製作総指揮 デヴィッド・コス David Kosse
製作総指揮 ダニエル・バトセク Daniel Battsek
脚本 マーティン・マクドナー Martin McDonagh
撮影 ベン・デイヴィス Ben Davis
プロダクションデザイン インバル・ワインバーグ Inbal Weinberg
衣装デザイン メリッサ・トス Melissa Toth
編集 ジョン・グレゴリー Jon Gregory
音楽 カーター・バーウェル Carter Burwell

出演 フランシス・マクドーマンド Frances McDormand
出演 ウディ・ハレルソン Woody Harrelson
出演 サム・ロックウェル Sam Rockwell
出演 アビー・コーニッシュ Abbie Cornish
出演 ジョン・ホークス John Hawkes
出演 ピーター・ディンクレイジ Peter Dinklage