
公開日 1968/06/08 107分
ラストをアイコン化してハッピーエンドのように語る人、作品を観てないのがバレますよ。
本作はハッピーエンドではありません。
花嫁強奪という当時はかなりドラマチックであったであろうラストは、花嫁も笑顔で教会から逃げ出すが、バスに乗り込んだ最後の最後のショットでは二人は笑っていない。
NHK-BS録画で観たのだが、放映後のキャスト・スタッフの紹介映像にはこの笑わない2人の映像が切り取られていた。さすがNHK。この表情は、周囲を顧みず、若さのみで突っ走った2人の未来を示唆しているし、実際この後のストーリーが明るいものとは思えない。
主人公に描かれるのは若さゆえの熱と性的経験による自信だ。相手の気持ちも顧みずに「結婚する」と言い切る、今ではイタいストーカーまがいの熱量。この時代は実際に会わないことには"脈"の有無は分からないので追い掛けるのも理解できるが、意思伝達手段が氾濫している今では、いろんなツールで分かる・知らせるので、こんな展開はありえない。
今ならキャサリン・ロスの想いがほぼ描かないのは致命的であるのだが。
なので、あくまでもこの時代ならでは価値観に基づく物語。
過去の名作は今でも名作という訳ではない。
学校で勉強とスポーツのみに打ち込んできたものに有りがちな頑なさや青さはよく表現できていると思うし、青臭いこと自体は嫌いではない。
但し、主人公のように働くことも知らず、車も買い与えてもらい、親の金で部屋を借りてストーカーまがいのことをするのはいけ好かない。
こんなことは年齢に関わらずに解るべきもので、つまりはバカでしかない。
不倫行為を「握手したようなもの」と言い切る"軽さ"もそうだ。通常あり得ない花嫁強奪ストーリーに説得力を持たすにはこの"軽さ"が必要だったのだろうが。
借りた部屋の管理人が「お前は嫌いだ」という台詞は一般人が持つ主人公の印象を代弁したものだろう。
それでも自分のケツは自分で拭くしかない。
半端ない駆け落ちをした世間知らずの2人にその意思はまったく感じられない上、世間の庇護がなくなる二人に、愛を育んでいけるのだろうか。
原題 THE GRADUATE
製作国 アメリカ
製作 Mike Nichols Lawrence Turman Production
配給 ユナイト映画
監督 マイク・ニコルズ Mike Nichols
製作 ローレンス・ターマン Lawrence Turman
原作 チャールズ・ウェッブ Charles Webb
脚本 バック・ヘンリー Buck Henry
脚本 カルダー・ウィリンガム Calder Willingham
撮影 ロバート・サーティース Robert Surtees
音楽 ポール・サイモン Paul Simon
音楽 デイヴ・グルーシン Dave Grusin
出演 ダスティン・ホフマン Dustin Hoffman
出演 キャサリン・ロス Katharine Ross
出演 アン・バンクロフト Anne Bancroft
ウィリアム・ダニエルズ William Daniels
出演 バック・ヘンリー Buck Henry