
公開日 2017/03/18 112分
悪くはない。どちらかいえばいい作品だろう。
それを前置きした上で、本作が各評論の年間のベスト作に顔を出すことに違和感を感じる。
(アカデミー賞作品賞、主演女優賞、脚色賞ノミネート)
舞台は1950年代。アイルランドからニューヨーク、ブルックリンへの移民として移り住んだ少女の成長物語。
端的に言えば「ド田舎から都会に移り住んだ少女の成長と恋の物語」。
もう映画では使い古された根性ドラマで、時代背景も今更ながらなのだが、インフラの発達によって世界がより狭くなった今だからこそ、この時代の「遠い世界」が新鮮だ。
主人公の都会での頑張りや、寮生活での同郷の仲間意識の共有は、使い古された題材とは言え魅力的だ。
ただ物語は基本的に性急で、且つ主人公の姉との関係や、職場の上司、寮母との関係の描写は希薄で、ありふれた台詞を頼りに良好な関係が描かれる。
細部まで描き込むと大作になるだけに、観客のテンプレートに頼った演出が感じられる。
恋人との出会いなどにも意外性はない。印象的なのは主人公が故郷アイルランドに戻って過ごすうちに呟く「忘れていた」という2度の台詞。
1度は故郷の美しい海岸を見た時のもの。もう1度は他人を貶めることに腐心する狭隘な故郷の老婦人に再会した時。
人は日々の生活の中で、美しいものも、醜いものも忘れていくのだということを思い知らされた。
だから日頃から美しいものに接することが大事だな、とも。
しかし主人公は、もしこの醜い人物と出会うことがなかったら、どうしたのだろうか。
フラれた故郷の彼氏はちょっと可哀想。
物語は、新天地に向かう若い娘に、かつて自分が教わった心得を伝授するまで成長した主人公の姿を見せて爽やかに幕を閉じる。
美人というには微妙なシアーシャ・ローナンは、安定の芸達者ぶり。
共感を得る部分の多い題材だけに、爽やかなエンディングに至るまで、一般受けのいい作品だろう。
原題 BROOKLYN
製作国 アイルランド
製作国 イギリス
製作国 カナダ
製作 Wildgaze Films
製作 BBC Films
製作 Parallel Film Productions
配給 20世紀フォックス映画20th Century Fox
監督 ジョン・クローリー John Crowley
製作 フィノラ・ドワイヤー Finola Dwyer
製作 アマンダ・ポージー Amanda Posey
製作総指揮 クリスティーン・ランガン Christine Langan
製作総指揮 ベス・パッティンソン Beth Pattinson
製作総指揮 トーステン・シューマッハー Thorsten Schumacher
原作 コルム・トビーン Colm Toibin
脚本 ニック・ホーンビィ Nick Hornby
撮影 イヴ・ベランジェ Yves Belanger
プロダクションデザイン フランソワ・セギュアン Francois Seguin
衣装デザイン オディール・ディックス=ミロー Odile Dicks-Mireaux
編集 ジェイク・ロバーツ Jake Roberts
音楽 マイケル・ブルック Michael Brook
出演 シアーシャ・ローナン Saoirse Ronan
出演 ドーナル・グリーソン Domhnall Gleeson
出演 エモリー・コーエン Emory Cohen
出演 ジム・ブロードベント Jim Broadbent
出演 ジュリー・ウォルターズ Julie Walters