エイリアン:コヴェナント

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公開日 2017/09/15  122分


★★★★★ 5.0


前作『プロメテウス』は大変面白かった。なので鑑賞。
予告で観る限りでは前作のような壮大な画は見られなかったので不安を抱えながらではあったのだが。
「コヴェナント」は本作での宇宙船の名前であり、契約や約束という意味らしい。
改めて何故『プロメテウス』のタイトルに「エイリアン」が冠されなかったのが解らない。
前作(エイリアン0"ゼロ")の15年後、『エイリアン』の20年前の物語で『エイリアン0.5』ともいえる作品。
前作での疑問点や難点は払拭される内容となっている。
例えば前作でアンドロイド・デヴィッド(マイケル・ファスベンダー)が乗組員チャーリーにエイリアンの素を飲ませた理由。
この時点で社長はエイリアンの地球への持ち帰りは指示しておらず、動機が掴めなかった。
私自身この時は乗組アンドロイドは人間の命令によって動いているものと思っていたのだが、本作でデヴィッドには意思があることが明らかにされる。
オープニングで社長(デヴィッドの創造者)の紅茶を入れる指示に対して不服そうにする表現が前作にあれば、人間に従わないデヴィッドの深層心理を垣間見ることができたのだが。

本作の舞台が前作と同じ星になるのか、ショウ博士(ノオミ・ラパス)とデヴィッドの向かった先なのかには興味があった。
それは当初からは分からないのだが、舞台となる星に宇宙服なしで降りられるあたりから次第に後者であることが判りだす。
本作の鑑賞後に衝撃的に分かったのだが、本作の後にはもう1作作られる予定らしい。
なので、それまで不満に感じていた本作の未消化の部分=謎も仕方ない。
デヴィッド・ウォルターのアンドロイド問題。前作でウォルターがチャーリーにエイリアンを飲ませたのは、
1.地球に持ち帰る、
2.エイリアンの生態に対する好奇心、
3.ショウ博士への嫉妬心(私の奥さん説)があり得る。
本作でダニエルを殺してしまわないのは、ダニエルズ(キャサリン・ウォーターストン)への恋心があるからとも考えられる。(「ショウ博士と同じことをしてあげる」と言っている)
その一方で、3.嫉妬があるなら、実は本作でのウォルターの夫ブランソン艦長(ジェームズ・フランコ)の事故死も仕組まれた可能性がある。
奇しくも新船長オラム(ビリー・クラダップ)は「偶然は存在しない」と言っている。
ならば、最後に残るアンドロイドは本当にデヴィッドなのか?そしてダニエルズの運命はどうなるのか?
デヴィッドにせよ、ウォルターにせよ、ダニエルズに恋しているアンドロイドはすぐに殺さない。
次作ではこのアンドロイドとダニエルズの運命に興味が移る。
どちらも『エイリアン1』で見ることはできないのだが。
しかし「アンドロイドに心があるか」。「あるとすればどのような心理なのか」というテーマは、公開が近い『ブレードランナー』化してないか?

前作の主人公であれだけの生存本能を見せたショウ博士の顛末がぞんざい過ぎないかもと思う。
自らの作品だから前作への敬意はなくてもいいのだろうか。
とはいえそれも、次作に更に詳細があるのかもしれない。

「エイリアンが弱い」という指摘はまだ進化途上なのだからという理由付けはあるだろう。
3D映像を意識したアクション、特にエイリアンとの格闘シーンにおいては『エイリアン2』を彷彿させる。
ショウ博士が乗った異星人(創造主)の宇宙船の顛末もよく分からない。
山中に墜落していたのは確かだが、異星人の広場に到着(その後エイリアンばら撒き)した筈なのに、なぜ墜落しているのだろう。
予想通り前作のような壮大なシーンがなかったのは残念。
異星人の死体だらけの広場は余りにも異様だが。
SF的造形も前作を踏襲したもので、新鮮な感動も薄い。
細微に至る宇宙船の内部やエイリアンの造形、武器には興味がないのでその拘りについてはよく分からない。
エンディングも他のエイリアン作品と比べると珍しく後味が悪い。

リドリー・スコット監督は主人公(女性)の趣味は相変わらずよく分からない。
シガニー・ウィーバー然り、ノオミ・ラパス然り、キャサリン・ウォーターストン然り。
前作同様に「何でもっと画面を明るくできない?」とかSF的疑問は時折起こる。
画の部分と、"次作ありき"な分だけ、前作ほど楽しめなかったのと、前作の”懐かし感”や”久し振り感”がなく、逆にエイリアンの登場、寄生パターンへのマンネリ化がハンデになってはいる。
楽しくは観られたが、次作を観るかには悩む。そんな程度の作品だ。

原題  ALIEN: COVENANT

製作国 アメリカ
製作 20世紀フォックス映画
製作 Scott Free Productions
製作 TSG Entertainment
製作 Brandywine Productions
配給 20世紀フォックス映画

監督 リドリー・スコット Ridley Scott
製作 リドリー・スコット Ridley Scot
製作 マーク・ハッファム Mark Huffam
製作 マイケル・シェイファー Michael Schaefer
製作 デヴィッド・ガイラー David Giler
製作 ウォルター・ヒル Walter Hill
原案 ジャック・パグレン Jack Paglen
原案 マイケル・グリーン Michael Green
脚本 ジョン・ローガン John Logan
脚本 ダンテ・ハーパー Dante Harper
撮影 ダリウス・ウォルスキー Dariusz Wolski
プロダクションデザイン クリス・シーガーズ Chris Seagers
衣装デザイン ジャンティ・イェーツ Janty Yates
編集 ピエトロ・スカリア Pietro Scalia
音楽 ジェド・カーゼル Jed Kurzel
クリーチャー原案 ダン・オバノン Dan O'Bannon
クリーチャー原案 ロナルド・シャセット Ronald Shusett

出演 マイケル・ファスベンダー Michael Fassbender
出演 キャサリン・ウォーターストン Katherine Waterston
出演 ビリー・クラダップ Billy Crudup
出演 ダニー・マクブライド Danny McBride
出演 デミアン・ビチル Demian Bichir
出演 カーメン・イジョゴ Carmen Ejogo
出演 ジェームズ・フランコ James Franco
出演 ガイ・ピアース Guy Pearce