ブラック・スキャンダル

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公開日 2016/01/30  123分


★★★★★ 5.0


邦題の『ブラック・スキャンダル』や打たれた予告や宣伝から受けた印象は軽いアクション映画だった。
ジョニー・デップのこれまでの作品歴からも連想したのかもしれない。
たが原題の『BLACK MASS』(黒ミサ、黒い集団)と、実際に観た内容はかなり異なるものだった。
『ゴッドファーザー』シリーズや『ワンス・アポン・ア・タイム・イン…アメリカ』に代表されるマフィア映画のタッチに近い、最近では『ディパーテッド』にその内容においても近い。
ただ、本作はマフィア映画に多い群像劇ではなく、物語はジョニー・デップを中心に進む。

『ディパーテッド』がオスカーを得たのなら、本作もノミネートぐらいは…と思うほどの緊張感と重さ、暗さに満ちた作品である。
主人公の暴力の深因はかなり掴み辛い。その心の背景の見え辛さが、「こいつ、何をするか分からないぞ」という恐ろしさに繋がっているのだが、作品としての掴み辛さにもなっている。
息子を亡くしたこと、母親を亡くしたことが、主人公の絶望と孤独の所以のようには描かれてはいるが、その描写は薄く、そこにすがっていた節は窺われない。
マフィアにありがちな"忠誠心"も台詞としては何度も出てくるが、裏切りが暴力の起因というよりも、もはやそれはルール化されたものとして描かれている。
IRAに莫大な資金提供するなど、私腹を肥やすことに執心しているわけでもない。
主人公達のルーツである"サウジー"(MASS)の良かりし頃は、マフィア映画における「いまさら」な描写として省かれたのだろうか。
だが、そこへの郷愁がないのは、やはり主人公は「生まれながらの犯罪者」というのが、この作品のコンセプトなのだろう。
立場の異なる兄弟を演じるジョニー・デップとカンバーバッチはやはり上手い。
仲間や恋人に対してでさえ根っこは凶悪で暴力的であるのにも関わらず、兄弟には愛情が滲んでいるが汲み取れる。

主人公達があまりに悪どく、正義感に満ちた新任検事に感情移入してしまうのは、賞レースには向かない一因でもあるだろう。
実話をベースにしていることもあって、展開に意外性はない。
やくざもの達の隆盛と破滅だ。
特異なまでの暴力性に満ちた男が、ぺんぺん草も生えない殺伐とした人生で、起こりえない筈の権力と金を得ることができた時代(タイミング)と環境を説得力を持って描いているのは見事。
期待以上に面白く観ることはできた。

原題  BLACK MASS

製作国 アメリカ
製作 Cross Creek Pictures
製作 Grisbi Productions
製作 Infinitum Nihil
配給 ワーナー・ブラザース映画

監督 スコット・クーパー Scott Cooper
製作 ジョン・レッシャー John Lesher
製作 ブライアン・オリヴァー Brian Oliver
製作 スコット・クーパー Scott Cooper
製作 タイラー・トンプソン Tyler Thompson
製作総指揮 ブレット・ラトナー Brett Ratner
製作総指揮 ジェームズ・パッカー James Packer
製作総指揮 ピーター・マルーク Peter Mallouk
製作総指揮 レイ・マルーク Ray Mallouk
製作総指揮 クリストファー・ウッドロウ Christopher Woodrow
脚本 マーク・マルーク Mark Mallouk
脚本 ジェズ・バターワース Jez Butterworth
撮影 マサノブ・タカヤナギ Masanobu Takayanagi
編集 デヴィッド・ローゼンブルーム David Rosenbloom
音楽 ジャンキー・XL Junkie XL

出演 ジョニー・デップ Johnny Depp
出演 ジョエル・エドガートン Joel Edgerton
出演 ベネディクト・カンバーバッチ Benedict Cumberbatch
出演 ロリー・コクレイン Rory Cochrane
出演 ジェシー・プレモンス Jesse Plemons
出演 ケヴィン・ベーコン Kevin Bacon
出演 ピーター・サースガード Peter Sarsgaard
出演 ダコタ・ジョンソン Dakota Johnson
出演 コリー・ストール Corey Stoll
出演 デヴィッド・ハーバー David Harbour
出演 ジュリアンヌ・ニコルソン "
Julianne Nicholson"
出演 アダム・スコット Adam Scott
出演 ジュノー・テンプル Juno Temple