千と千尋の神隠し

店舗イメージ

公開日 2001/07/20  125分


★★★★★★ 6.0


アカデミー賞(アニメ)受賞もあって、興収300億というモンスター映画。
宮崎駿監督の完全オリジナル。
八百万の神が訪れる湯治場(湯屋)とそこに偶然踏み込んでしまった少女の物語。
架空の舞台と登場人物は、まさに宮崎駿監督のイマジネーションの世界。
小説などの文字媒体ではこの映像は想像することはなかなかできない。個人の想像力を越えるものを見せてくれるという点で、"映画らしい"作品だ。
異国の地で少女が一人での成長していく(根性)物語という括りで見れば、『魔女の宅急便』に近い。
だが、宮崎駿作品に多く見られる勝ち気で芯の強い主人公ではなく、今回は優しくのんびりした少女が描かれる。この少女が本来持っている優しさや欲の無さが、異形の世界を生き抜く武器となる。両親を救う為ならどんなに怖いことでもできてしまう。食べ物や金銭の誘惑には釣られない。
この少女の成長課程を、隙なく2時間以上飽きさせずに圧倒的に見せる構成力はさすがと言わざるをえない。300億以上稼ぐとは、そうことなのだろう。
ただ、何もかもが架空の世界ゆえに、舞台設定やそこのルールが把握し辛い。
そこの住人は年をとるのかさえ解らない。
金(砂金)は換金できるのか、どこで使うのか。
金があれば、勝手に電車で出ていくことができるのか。電車はどこまで行くのか。
湯屋の主人、湯婆婆についても、空を飛ぶ理由も坊との関係も、魔法の限界性(何ができて、何ができない)も解らない。
そんな中でどんどん進む話には、作り手の都合のよさが見え隠れすることもある。釜爺が切符を持っているとか。
働かなければ両親が死んでしまい、自分も消されるって「女工哀史」的な設定なのだが。主人公と共に働き、いつか出ていく夢を持つりんなどは、年期明けを待つ女郎の物語にさえ見える。
この世界に踏み込んでしまった原因もかなり強引で、金を払えば何をしてもいい風な両親は描かれてはいるが、「えぇー、勝手には食べないでしょ」とは思ってしまう。まあ、その辺りは詮索しても埒があかない。
諸外国に多い一神教に対して、多神教である日本の特色である、あらゆるものに神が宿っているという視点は面白い。川にも神様が居るんだよ、と。
川を汚すと神様も酷いことになるんだよ、と。この辺りは説教臭いととる人もいるだろうが。
湿っぽい恋愛感情はそぐわないが、千とハクの恋物語については、恋と呼ぶものではないような気がする。
また、千尋という名を奪われ千と呼ばれるのは、会社組織を表しているとか、コミュニケーションが取れず、金品で他者を惹き付け強欲の限りを尽くすカオナシは現代人を象徴してるとか、様々な解釈を試みるのも面白いだろう。
宮崎駿監督の才能溢れる作品で、最後まで画面に引き付けられたが、余りにもファンタジーが過ぎて、好きな作品かというと微妙だ。

英題  SPIRITED AWAY

製作国 日本
製作 徳間書店
製作 スタジオジブリ
製作 日本テレビ
製作 電通
製作 ディズニー  Walt Disney Pictures
製作 東北新社  TOHOKUSHINSHA FILM CORPORATION
製作 三菱商事
配給 東宝  TOHO

監督 宮崎駿 Miyazaki Hayao
プロデューサー 鈴木敏夫 Suzuki Toshio
製作 松下武義 Matsushita Takeyoshi
製作 氏家齋一郎 Ujiie Seiichiro
製作 成田豊 Narita Yutaka
製作 星野康二 Hoshino Kouji
製作 相原宏徳 Aihara Hirotoku
製作総指揮 徳間康快 Tokuma Yasuyoshi
原作 宮崎駿  Miyazaki Hayao
脚本 宮崎駿 Miyazaki Hayao
美術監督 武重洋二  Takeshige Yoji
音楽 久石譲 Hisaishi Joe

出演 柊瑠美 Hiiragi Rumi
出演 入野自由 Irino Miyu
出演 夏木マリ Natsuki Mari
出演 内藤剛志 Naito Takashi
出演 沢口靖子 Sawaguchi Yasuko
出演 マット・ロス Matt Ross
出演 我修院達也 Gasyuin Tatsuya
出演 はやしこば Hayashi Koba
出演 神木隆之介 Kamiki Ryunosuke
出演 玉井夕海 Tamai Yuuni
出演 大泉洋 Ohizumi You
出演 菅原文太 Sugawara Bunta