
公開日 2014/09/27 124分
本作にて監督業を引退すると宣言しているリチャード・カーティス作品。それほどに製作が辛かった作品なのか。それとも、それだけ納得のいく作品に仕上がったのか。
コメントによると前者に近いようだ。何年もの間、一つの作品に拘束されるのはかなり辛い作業らしい。ただ本作もリチャード・カーティスらしさが滲んだ素晴らしい作品だと思うし、あまりにも残念ではある。
さて、意外にも今回は、所謂“タイム・トラベルもの”だ。
タイムトラベルに付き物の“辻褄が合わない”部分は当然あるのだが、観客視点はあまりそこにいかないし、製作側もそこに重きが置いている印象はない。
タイム・トラベルの理不尽さを繕うような説明も薄く、ルール的なものといえば、未来には行けない、自分の過去にしか行けないということくらいだ。
何故タイム・トラベルが出来るかに至っては、「一族が持って産まれた才能」で片付けられている。
敢えて言うなら、未来には行けなくても、未来の情報は手に入れることが出来る筈で、例えば父親が未来から現在に来たりするシーンもあったりする。
ラストの散歩も子供が生まれる前に戻っている訳で、理屈的には腑に落ちない。
しかし本作において、こんなことはどうでもいいのだ。
世の中はこの作品のように単純ではないし、そうは上手くはいかない。
何度繰り返しても上手くいかなかったり、解っていてもできなかったり、裏目に事が運んだりするものだ。
繰り返したくない日なんて、フツーに大概ある。
だが、それでも敢えてキレイ事を描くこの作家の作品に好感を持たずにはいられない。毎日はもっと面白くできる、楽しく過ごせる、と。
毎日が苦しみの連続だったり、日々を繰り返すことに意義を見出だせない人には、面白味のない作品かもしれない。甘ったるい作品かもしれない。
その点、オールマイティなファンタジーではないが、恋人と出逢った日のときめき、付き合い始めた頃の高揚感など、人生における繰り返したい瞬間がビビッドに描かれている。
付き合い始めの頃の通勤する姿を音楽と映像で一気に観せるシーンなどは、さすがの手際の良さだと思う。
結婚式のスピーチで「愛してると言えてない」と悔やんで、時間を巻き戻す父親は、既に自分の運命を知ってしまっている父親なのだろう。
だからといって、嵐がくるから式を延ばせなんてことは言わない。
このように、この場面の父親はいつの父親なのかを想像するのも楽しい鑑賞方法だと思う。
何気ない毎日がいかに素晴らしいかを謳った、あまりにもベタな作品だけど、心洗われ且つ胸を打たれる作品。
これぞ!デートムービーな作品でもある。
原題 ABOUT TIME
製作国 イギリス
製作 Translux
製作 Working Title Films
配給 シンカ SYNCA Creations Inc.
配給 パルコ PARCO Co., Ltd.
監督 リチャード・カーティス Richard Curtis
製作 ティム・ビーヴァン Tim Bevan
製作 エリック・フェルナー Eric Fellner
製作 ニッキー・ケンティッシュ・バーンズ Nicky Kentish Barnes
製作総指揮 リチャード・カーティス Richard Curtis
製作総指揮 ライザ・チェイシン Liza Chasin
製作総指揮 アメリア・グレインジャー Amelia Granger
脚本 リチャード・カーティス Richard Curtis
撮影 ジョン・ガレセリアン John Guleserian
プロダクションデザイン ジョン・ポール・ケリー John Paul Kelly
衣装デザイン ヴェリティ・ホークス Verity Hawkes
編集 マーク・デイ Mark Day
音楽 ニック・レアード=クロウズ Nick Laird-Clowes
出演 ドーナル・グリーソン Domhnall Gleeson
出演 レイチェル・マクアダムス Rachel McAdams
出演 ビル・ナイ Bill Nighy
出演 トム・ホランダー Tom Hollander
出演 マーゴット・ロビー Margot Robbie
出演 リンゼイ・ダンカン Lindsay Duncan